FF7では、しばしば「特別」という言葉で、主要キャラクターの心情や立ち位置が語られます。
この「特別」の言葉の意味を突き詰めていくと、3作目となるリベレーションズへの流れや伏線も見えてくるはずです。
FF7REMAKE(以下リメイク)、FF7REBIRTH(以下リバース)の本編はもちろん、各小説で語られていることも含めて「特別」に関して考察しました。
目次
FF7における「特別」とは?
「特別」という言葉は、もちろん言葉本来の意味で使われているのですが、FF7の特定のキャラクターが発する場合、あるいはそのキャラクターを指すような場合においては、使い方が統一されているように思います。
恐らく、そこで使う「特別」に込められた意味が微妙に違うからでしょう。
以下などのシーンを例に、どのように違うのかをあげていきます。
※セリフについては要約して記述している場合があります。
特別な男になる、ティファの特別になる(『Dear Destiny』p317)
原作の精神世界にて「俺はみんなとは違う、特別なんだと考えるようになった」「強くなりさえすれば、みんなだって、ティファだって、認めてくれる――」という趣旨の吐露
俺はほかのやつらとは違う、特別なんだと思っていた。でもそれは…それはこんな意味じゃない(原作およびリバース、ニブルヘイム魔晄炉にて自身の本当の出自に疑惑を持った時)
両者の言う特別とは、「普通とは異なる上位の存在」という意味では同じ部分もありますが、違う部分もあるように感じます。
クラウドの「特別」は、何かにとって、誰かにとって特別になるという、他者依存の評価です(自分にとって、ではないところがまさにそうで、面白いところ)。
認められたいという願望からも、それが強く伺えます(その一部の構成要素として、無自覚な恋心が入っているイメージ)。
セフィロスの「特別」は、もっと自己完結型の、アイデンティティの根幹部分を指しているように思います。
他者からそう思われるからというよりは、実態と、自分自身がほかのやつらとは違うと感じることで自分が構成されているイメージ(クラウドと決定的に違うのは、実態を伴っていること)。
英雄セフィロス!写真を!とせがまれても無視しようとしていたことからも、他者から賛辞されることを目的としていない。
自分の出自を知る経緯でも、自分で気づき→自分で調べ→自分で理解、納得していたように。
ちなみに、ティファも小説でザンガンから「私は特別なのに、なんでわかってくれないんだと周囲を見下す」ことを指摘されています(『Traces of Two Pasts』p32)。
これはクラウドが求めている他者依存の評価と同じような「特別」ですね。
幼少期にツォンからセトラの能力を指して「君は特別な子んだ」と言われ、「違うもん!」と否定する(原作、リメイクの各本編)。
「特別区」に閉じ込められたと感じる話など(『Traces of Two Pasts』p292-293)。
ツォンからエアリスに大して「君は特別だ。普通の人生にあこがれても、それは叶わない。」(『Dear Destiny』p279)
エアリスはセトラ(古代種)であり、存在そのものが「特別」です。
しかも、クラウドが望み、セフィロスが受け入れていたのとは対照的に、エアリスは自身の境遇としての「特別」を肯定的に受け取っておらず、むしろ「普通」を望んでいます。
特別区に閉じ込められた……と話すことからも、特別とは彼女を縛り、自由を奪うものの象徴だからでしょう。
コスモキャニオンにて、「これからも(仲間たちと)一緒にいるために良い人でいる。普通の人生は無理でも」と、自身の心内を吐露するシーンがありますが、普通に憧れを抱きながらもあきらめているであろうことが読み取れます。
自分のことを特別で普通じゃないと、どこか寂しそうに告げる(『Dear Destiny』p160)
エアリスに「世界でたった一人の特別な存在」と、セトラではない意味で告白する(『Dear Destiny』p185-186)
ザックスは本編中ではなく小説の描写にはなるのですが、上記のようなシーンで「特別」が使われていました。
特徴的なのは、ソルジャーとしての特別を語るときはネガティブ、自分が相手をどう思っているかを語るときはポジティブな印象を受けることです。
特に後者については、自分の意思で「特別」かどうかを決めているのが、クラウドとの大きな違いなんです。
クラウドはあくまでも相手に特別だと認めてほしいという他者評価の要求に対し、ザックスは自分にとってあなたは特別だという結論があり、その意思表示の言葉として使っています。
また、英雄に対する特別を語るときに、どこか寂しそうに見えたのは、彼が英雄の実態についてを薄々感づいていたからかもしれません。
実は恋愛的な意味もあるようだが…
ちなみに、ザックスがエアリスに対して使ったように、「特別」という言葉はしばしば恋心としての意味でも使われていると感じます(ティファが、クラウドから特別な感情を向けられることを期待している、とか)。
そこで面白いのは、以下のように使い分けられている点です。
ティファ → クラウド”から”特別な感情を伝えられたらどうしよう(クラウドにとっての特別、という意味に近い)
ザックス → ”ザックスにとって”エアリスは特別
クラウドとティファが、自分よりも”他者からそう思われたいと感じているとき”に使うのに対し、ザックスは上述のとおり、”自分がどう思っているか”を語るときに使っています。
前者の使い方は、恋愛は恋愛でも、非常に幼い、ある意味では独りよがりな――そんな甘酸っぱさと苦さを含んでいる。そう伝えたいのではないでしょうか?
特別と、英雄とセトラとJENOVA
FF7における「特別」は、別の言葉でも表されます。
それが「英雄」「セトラ(古代種)」「JENOVA」です。
いずれも存在そのものが特別なのですが、性質や評価軸が絶対的に異なります。
英雄とは偶像と表裏一体である
英雄がどのように特別な存在であるかは、宝条の言葉にその意味が隠されているように思います。
英雄には 万人がひれふす美しさが必要なのだ
英雄は 資質や功績だけではなく 印象に対して与えられる称号だからな
(リバース本編、コスタ・デル・ソルにて)
印象とは、相手や物に対して抱くイメージです。
つまり自分ではなく、相手から、周囲からどう思われるかで決まるもの、と言い換えられます。
要するに、英雄という特別な存在は、他者依存の評価の中で作り上げられるステータス、偶像という側面を持っているのです。
クラウドはリメイクでジェシーから「顔がいい」と言われ、小説『Traces of Two Pasts』の中では「セフィロスは顔が美しい、クラウドはもっと美しい――」との評価が加わっていましたよね(同書p18)。
クラウドの外面補正の追加こそ、宝条の言っていた「英雄に必要な印象評価」の一つ。
それを、顔の美しさを褒められるという描写で、伝えてきているように思いました。
しかしそれは、あくまでも印象…偶像としての評価に過ぎません。
功績もさることながら、美しくて強い、それが英雄。
FF7の「英雄」とは決して一筋縄ではない…「人々の期待や印象によって作られた、中身と乖離している偶像」としての側面が、強く描かれているように思います。
なお、ザックスの描き方からのみ、英雄に対するポジティブな側面を受け取ることができました。
例えば、どんな世界線でも“自分で”道を決めて選んでいるということ(誰を助けるか選べない、という道も含めて)。
ただ、あれは英雄だからというよりも、ザックス個人の素質由来のところが大きい気がしていて。
繰り返しになりますが……“自分で”選んでいるというのがそもそもそう感じた理由で、周りが言っていたからとか、誰かにそうしてと頼まれたからとかじゃない。
他者の存在よりも先に、自分の意思があるんです。
動機の先に他者依存の評価がない、つまり従来の(FF7の中の)英雄像ではない……でも、こっちのほうが本来の”英雄像”に近いと感じるのは、私だけでしょうか?
自分とは何者かと問う前に、自分が何をしたいかを問うのがザックス。
だから、特別だとか、英雄だとかに固執している感じがしなくて、そういうメッセージなのかなと感じたんですよね。
セトラとは生まれながらの特別そのものである
セトラ(古代種)は生まれながらにして特別です。
そもそも普通の人とは“血”が異なり、その血の力で星と対話できる不思議な力を持っています。
英雄とは違って外からの評価で成立するものではなく、「生まれたときから」持っている類の特別、それがセトラです。
本人の意思とは全く関係なく、なってしまっていた。
なったというより、背負ったと言ったほうが、エアリスの境遇により近いかもしれません。
特別になりたかったクラウドとも、特別という自負があったセフィロスとも違う。
エアリスは、セトラという約束された「特別」を背負っていたといえます。
“異物”としての特別・JENOVA
ここでもう一つ、欠かせない「特別」な存在がいます。
かつて宇宙から飛来し、災厄と呼ばれた「JENOVA」。英雄やセトラとの大きな違いは、星にとって“異物”である点です。
JENOVAは神羅によって回収された際、古代種だと誤認されたことで、古代種の繁殖を試みる「JENOVAプロジェクト」に利用されます。
このプロジェクトで生まれたのがセフィロスでした。
ニブルヘイム魔晄炉で真相を知ったセフィロスは絶望し、人間への復讐と、星の支配を決意するのです(ただしこの時点では、セフィロスは自分のことを古代種だと思っています)。
ここで、セフィロスの言葉が思い出されます。
「自分の思っていた特別は、こんな意味じゃない――」
人造モンスターを見て、こんな風に作られたかもしれない……と、自分を形作っていた「特別」が、セフィロスの中で揺らいだ瞬間でした。
もしかしたら、セフィロスの中で「特別」の崩壊を繋ぎ止めた、あるいは「特別」を保つ拠り所として、古代種 / JENOVAがその役割を担ったのかもしれないと思いました。
(モンスターのような)こんな特別ではない、自分の中にあるのは「本物の特別」である、と。
当初、それは古代種だったのですが、ライフストリームの旅人となり、改めてJENOVAとしての特別を受け入れた、受け入れざるを得なかったのかもしれないなと思いました(でなければ、望まぬ特別を認めることになるから)。
星にとっては異物であり、クラウドたちにとっても絶対的な敵であるJENOVAですが、セフィロスにとっては、自分を特別たらしめる唯一の(最終的な)依存先だったのかもしれません。
「特別」はそれぞれに何をもたらしているのか
本編中でひときわ「特別」が深く関係してくるクラウド、セフィロス、エアリス。
この言葉が各キャラクターに何をもたらしているのかを考えました。
セフィロス:自分を構成するアイデンティティとしての特別
エアリス:普通を望むことを許されない呪い、檻としての特別
特にクラウドとエアリスは、「何者かになりたい者」と「何者でもありたくない者」として、対照的に描かれているように思います。
また、アイデンティティという意味では、クラウドにとっても「特別=ソルジャー1st=英雄」はアイデンティティです。
ただし、それはあくまでも偶像であるため、原作ではそれを受け入れ乗り越えて、本当の自分を取り戻します。
3作目では特別からの解放が描かれるのではないか
Rシリーズの3作目のサブタイトルは「Revelation(リベレーション)」。
日本語にすると
・意外な事実、発覚、新発見
などの意味を持ちます。
また、「The Revelation」とすると
・黙示、啓示(神からの)、驚くべき新事実、暴露
ダブルミーニングが予想される「Liberation」は
・解放、釈放、自由になること
です。
3作目ではこれらのすべての要素が混ざってくると思いますが、こと「特別」に関して言えば、「Liberation」の「解放」が深く関係してくると予想しています。
つまり、
のではないかと。
クラウドは、何者かになりたいという他者依存の評価からの解放です。
原作でも精神世界を通じて描かれていると思いますが、3作目でもそれを踏襲するイベントが用意されるでしょう。
もちろん「クラウドの意外な真実」という意味でも副題が活きてくるのだと思います。
セフィロスは、JENOVAからの解放です。
正直、セフィロスがJENOVAから解放されることを望んでいるとまでは言い切れないのですが(どちらかというと望んでないように見える)、クラウドたちが倒すことで星に還るとすれば、それはある種の解放になります。
本来JENOVAは星に還れない異物なので、JENOVAからセフィロスが解放される=星に還るとなれば、ある意味での救済にもなるでしょう。ギ族がもともと望んでいた展開(星に還りたい)と近いかもしれません。
そう考えると、セフィロスにとっても「特別」はアイデンティティであるのと同時に、呪いのようなものでもあるのかもしれませんね。
エアリスは、セトラからの解放です。
小説『Traces of Two Pasts』で、母から譲り受けた白マテリアについてをティファに話したとき、「エアリスは誰に渡すのかな」と言われ、自分がセトラの末裔ではなくなる日のことをふと想像しています(同書p227-228)。
リバース本編でクラウドに渡ったものの、それは別の世界線のエアリスに戻り、代わりに力を失った空のマテリアがクラウドに渡りました。
これも恐らく、セトラからの解放を示唆する伏線ではないかと。
私は、マテリアとは星の知識・記憶であることから、多重世界(を表すもの)そのものであると考えています。
そして、空マテリアは、3作目で世界の統合や創造にも関わってくると予想しているのですが、その新しい世界とは、もしかしたらエアリスがセトラの末裔ではない世界でもあるのかもしれません。
ここで言う新しい世界とは、物理的に今の世界と切り離されているとは限りません。
意識が変わり、感じ方が変われば、それはもうきっと「新しい世界」なのです。
まとめ:FF7は「特別」に翻弄された者たちの物語でもある
重要なシーンで用いられている「特別」という言葉には、一貫した意味が込められていると思いました。
それはシーンだけではなく、キャラクターによっても緻密に使い分けられていると感じます。
3作目では、クラウド、セフィロス、エアリスが、それぞれの「特別」からどのように解放されるのか、期待と不安が膨らみます!
出典:
『FINAL FANTASY VII REBIRTH Dear Destiny』野島一成(株式会社スクウェア・エニックス、2020年)
『FINAL FANTASY VII REMAKE Traces of Two Pasts』野島一成(株式会社スクウェア・エニックス、2026年)
※ゲームの出典は別途表記しています








